寄り添うようにして去っていく二人の後ろ姿を見送る。
すると、後ろから急に話しかけられた。
「あら、アーシノ。一時限目はさぼったの?」
何度か話したことのある、同じクラスの女生徒だった。名前は……なんだっただろうか?
「フォルテールの歴史には、あまり興味がないんでね」
いつもの調子で軽く答えると、その女生徒はころころと笑う。
ようやく、普通の世界に戻ってきたような気がした。
「ねえ、今話してたのって、クリス・ヴェルティン?」
「……ああ」
「彼って、いつも誰とも話さないから、ちょっと驚いちゃった。授業中も、窓のほうば
っかり見てさ。アーシノ、友達なの?」
「……さあ?」
「あはは、アーシノは誰とでも話してるもんね」
「そういうこと」
「でもさ、なんか彼、暗いよね。いつも一緒にいる女の子と、変なこと話してるし」
「変なこと?」
「雨の街とか、なんか……雨のこととか。なにか知ってる? アーシノ」
わずかにためらった後、答える。
「さあ、知らないな」
かすかに視線を感じて振り返ると、わずかに離れた場所で、トルティニタが微笑んだ。
「街の歴史にでも興味があるんじゃないのか? ま、どうでもいいことだがな」
「それもそうね」
人に聞かれる場所で雨の話をしないようにと、彼女に忠告する必要がありそうだった。
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